8月である。
夏だ。夏休みだ。
当然われわれ社会人にそんなものは無く、ティーンがワイワイ遊びに出かけている間も関係なく馬車馬の如く労働をこなす、そんな日々。
今年の夏はもう言葉で表現できる域を超えた暑さで、まさに爆熱って感じだ。可哀想に、夏休みの若者もこれでは軽い気持ちで外出できないだろう。ざまあみやがれ
そんな捻くれた精神で今日も出勤準備をする。惨めだ。かなしい。
ドアを開ける。外に出る。暑い。燃えてしまう。
駅には(お出かけかな?)って感じの若者がちらほら。この暑さでも元気そうだ。
電車に乗り込む。若者たちと同じ車両。職場に着くまでに無駄な体力を使いたくない、《完全省エネモード》のおれと、「暑いね〜☆」と暑さをもひと夏の思い出として受けいれ楽しんでいる《お出かけ満喫モード》の若者たち。光と闇が渾然一体となって溶け合っている。おれは今どんな表情をしているだろうか
個人的に、いちばん読書が捗る空間は電車の中である。しかし今日ばかりは文字が滑って頭に入ってこない。そっと本を閉じる。
その日の仕事中、ずっと「夏休み」というワードが脳を支配していた。
夏休み───────
いいなぁ……
明日からの2連休、何も予定はない。何か試しに「夏休み」っぽいことをしてみても良いかもしれない。
◇
夏といえば何が想像できるだろう。涼しい職場のソファで考える。
青い空、白い雲、生い茂る緑、風鈴の揺れる音が響くのどかな空気とスイカ、かき氷……
アホか。涼しい場所で想像すると変に美化されたノスタルジィサマーが出てきがちだ。もう少し現実を見ろ。
灼熱地獄、太陽の放つ殺人ビーム、身を焦がす熱波、バーニングアスファルト、絡みつく湿気、滝のような汗、セミの裏側……
やはり日中に外出など馬鹿げている。しんでしまうぞ
「夏休み」とは少年のもの。少年とは現実を冷静に見る目など持ってない、いい意味で空想家であるべきなのだ。どんな環境だろうが適応して楽しみを見出す生命体たれ。地獄の業火もなんのその。ファッキューヘルファイア。
今年のおれは一味違う。そんな少年の心を取り戻すため「夏休みっぽい事」をしに外出を決意。
失われた青春を探す旅に出るんだ!おじさん頑張っちゃうぞ
折角だからどこか遠いところにでも行ってみようか、などと考えてみる。
どこがいいだろうか。
そういえば、元気いっぱい女子高生アイドル園田智代子 が所属する“放課後クライマックスガールズ”がJR東日本 外房線とコラボしているのだ。何でもオリジナルグッズが外房線最果ての駅のNEWDAYSに売っているらしい。
園田智代子といえば過去の記事でもちょくちょく出てくるアイドルだ。
(過去記事: 『つまりは愛しのプラシーボ』 より)
このアイドルは「クラスに一人はいるフツーの女の子」を自称しており、多くのファンが『クラスメイトだった気がする』と集団幻覚を見ている。園田、学校ではよく話しかけてくれるんだよな。
そんな園田のJRコラボ衣装がなかなか良いのだ。正直ちょっと欲しい。
距離を調べてみる。
最寄りから片道3時間半だ。往復7時間。学校?
さすがに遠すぎる。しかも何があるのか分からない最果ての駅だ。外房線ということは千葉の方だろう。移動中は暑さを感じないとはいえ、体力的にも流石にしんでしまう
他に考え直す。
何となくすれ違った同僚4人に「夏休みといえば?」
と無差別に質問をなげかけてみた。
「スイカ割り」「ラジオ体操」「スイカ割り」「夜更かし」
よし、色々な案が出た。さすがに外房線の旅よりかは身近なイベントが挙がった。これらを参考に考えを改めます
◇

改めなかった。
な〜〜にがスイカ割りだ。くだらねぇ
人生で初めて特急列車に乗る。目指すは外房線のめっちゃ遠いとこ、「安房鴨川駅」!
旅のお供には飛鳥部勝則氏の15年ぶりの新刊『抹殺ゴスゴッズ』!直筆サイン入りじゃい


それにしてもこの特急列車、動いてからちっとも窓の外に景色が広がらないではないか。
ずっと暗黒空間を走り抜けているような気がする。
もう日本全土が黒焦げになっちまったのか?と考えていると、突然窓から閃光が!

うわぁ〜〜

大吉だぁ〜〜

青い空、白い雲、生い茂る緑……
すごい、これが、“夏休み”!


あまりにもコンクリートが無さすぎてタイムマシンに乗っているのではないかと錯覚する。
この景色の変化が面白く、とてもじゃないが読書に全集中は出来なかった。
何よりせっかくの外出だ。貴重な景色を目に焼き付けておこう!←仮釈放中?

遠くに海が見えてきた。そうか、海があるのか。
おれってば、いま夏休み中!(陰キャ)
◇
特急とはいえ、かなりの時間乗車していた。終点の安房鴨川駅に到着。
降車。そこまで暑くない?
改札を抜けるとさっそく“放クラ”メンバーの園田智代子と杜野凛世 が。

園田、頑張ってるな……
凛世さんもこんにちは
その足でNEWDAYSへ向かう。

無事園田のアクリルスタンドをゲット。凛世さんのだけ売り切れていた。さすがです
無人店の為セルフレジで他のものと一緒に購入。
せっかくなので夏休みっぽく……

初めて見る色のMATCHとBad Ass Templeのグミも一緒に買う。
さて、目的は達成したが───────
少し近辺を散策してみることに。
温度は32℃。めちゃくちゃ過ごしやすいじゃんか

風景だけで明らかに海が近いということがわかる。

“海外の木”みたいなのも生えているし、デカいボビンを転がす人もいる。

すごく夏を感じる空間だ……

少し歩くともうすぐ目の前は海がひろがっていた。
砂浜の白、空と海の青だ。すげ〜〜〜

海風の影響か、そこまで暑いとは思わない。

わ〜〜〜海の水だ〜〜

いぇーい、ピースピース!

荒 荒 荒波立つ ここは Urbannite ウェカピポ♪ テッテレー

あっ、綺麗な貝落ちてる〜☆

全くピントが合わない!☆

甲殻類のかけらもある

ピントは相変わらず合わない!
たっ……楽しいな〜〜ハハ…
周りを見渡してみる。

家族で海を楽しむ人影が遠くに伺える。
おれはただひたすら、砂浜に落ちている貝殻と園田のピントを合わせるのに必死になっていた。
浜辺で1人這い蹲 る成人男性の影。明らかに地元民ではない。
ハァ……ハァ……
ポタッ
なにか雫が落ちてきて、砂浜に吸い込まれていった。
あ、雨……?
いや、空には雲ひとつない。
そうか……おれは今、惨めに感じているのだ。
ありもしない夏休みとやらを探し求め、少年の心を取り戻そうとした結果、片手に絵を握りしめ地面とにらめっこする変質者に成り下がった。
その現実を心のどこかで受け入れられず、意識の外で涙となって現れた。
おれは涙を拭こうと、目に手を当てた。
ん?
泣いて、ない?
じゃあ、この雫は……?
カメラをインカメラにしてみる。

びっくりするほどの滝汗ダ!
油断していた!海風が気持ちいいからといって、全く涼しい場所ではないのだ。それどころか、照りつける太陽が揺れる波に乱反射して全身を貫くプリズムレーザーと化している。
一刻も早く、この場から離れなければ!!
ズココッ
砂浜にっ足をとられてっ
うまくっ進めないっ!
あ゛あ゛っ!
◇

近くの公園で日陰に入る。
斬鉄剣を食らって真っ二つになったゾウがいる公園だ。
砂浜で走るとあんなに前進できないものなのか。
傍から見たら相当滑稽だったに違いない。
日陰とはいえまだまだ汗は止まらない。駅前にコンビニがあったはずだ。替えの下着を買って、トイレで着替えてから、もう帰ろう。

おれは熱中症にならないようササッと公園を後にする。じゃあな。Lv68くらいの雲梯がある公園。
◇

ということで駅に帰ってきた。
しっかりコンビニで下着を替えてリフレッシュしたあと、近くの本屋で立ち読みして体温を整えた。
結果、安房鴨川での滞在時間は大体1時間くらいだった。突発小旅行(?)なんでこんなもんでいいのよ
見るとちょうど帰りの電車が15分後くらいに来るので、待合室で涼みながら帰宅の準備をする。

ほんとうに恐ろしいが、電車が1時間に1本だった。ちょうど良い時間で助かった。

帰りは鈍行で帰った。
静かな車内と風景を取ろうと思ったが、目の前に夏休みの小学生がいたため彼らが窓に顔を向けた時に1枚撮影した。
スマホを持っていないのか、彼らは窓の外を見たりウロウロしたりして純粋に電車を楽しんでいるようにも見えた。
たまには電子機器から離れて、自然を楽しむのもいいかもしれない。と思いつつスマホでツイステを開いたところ、

そもそもスマホが使えない環境らしい。
おれも彼らに倣 い、風景を眺めることにした。
途中、小学生たちが【行川 アイランド駅】で少し盛り上がっていた。
行川アイランド、俺も知ってるぞ。今では廃墟となった遊園地だ。
心霊スポットとかにもなってたんじゃないか?などと思っておれも窓の外を見て驚いた。

「行川アイランド」の案内板の下に書かれているのは───────
「おせんころがし」
ここから行くのか……!
「おせんころがし」とは千葉県でも有名な心霊スポット……というよりある伝説があるスポットなのだ。
詳細は各自調べて欲しいのだが、なんでも“おせん”という女性がとある勘違いから投げ落とされたという悲しき民話が残る断崖絶壁で、慰霊碑も立っているらしい。
正直行ってみようかとも思ったが、体力的にも残っていないし、また帰りの電車を1時間待つのも辛いので諦めた。あとひとりじゃ怖いし
◇
墨田区へ着いたのは17時半ごろだった。
酷く疲れた。今日はもう動けない。
今でも森をぬけ山を越え、海に行ったというのが信じられない。
とりあえずアクリルスタンドを部屋に置いてみる。

左から 不死身の化け物、園田智代子、食人の化け物
夏だしホラーな奴らと並べてあげた。お前も涼を感じるといい
◇
さて、リアルの夏を実際に浴びてきたわけだが、次にすることと言えばひとつである。
バーチャル世界の夏も浴びてこよう。
やはり前回の万博の記事でもそうだったように、バーチャルとリアルとのアナザーディメンションを行き来して正当な審査を下す必要があるのだ。
2次元 と 3次元 繋ぐ 定期券 ♪
では、バーチャルサマーの世界へ!


お、おおっ……!

バーチャル世界ではこのようなアバターで生活してます。

よろしくね。

めちゃくちゃセミ鳴いてるし、BGMも夏休みって感じでめちゃエモかも!

道中、神社も見つけた。

まっすぐ歩いたら海に出ました!

記念に自撮り!

喉乾いてきたな……
海にいるけど、実際には家なので冷えたドリンクを飲むことだってできる
例えば……

ガシャン!

ドバー!






ガッガッガッ!



挽きたてアイスミルクコーヒー!
究極にインドア生活を極めた者は自宅がカフェになってんだワ

快適……♡
あ~やっぱ、インドアでもいいかもな俺
でも今月の外出は確実な進歩だ。
たった一回の経験で今までの生活スタイルを反転させるほどおれはこの世界に適応できると思っていない。
そこで、ちょっと中学の頃からの親友にこの急成長ぶりを自慢してみようと思う。
ここで「すごい!」だの「今度おれも海連れてってくれよ!ガハハ」だの声を頂戴することができたなら、
ポジティブなモチベーションを糧におれはアウトドア人間になれる。そんな気がする。


まぁ、ある意味自殺行為ではあったな。

おもろいwww