大学時代、カフェテリアでギャルの雑談を聞くのが好きだった。
という言い方をすると語弊があるがひとまず落ち着いてほしい。
はじめに、
「不特定多数のギャルズの会話を盗み聞きしてゲヘゲヘ言っていた訳では無い」
ということを断っておく。
おれが注目していたそのギャルというのは、ある1人のキャンパス生であり名前も知らない話したこともない人物だ。
顔だけわかる感じの。
なぜ注目していたかと言うと、
そのギャルは何にでも「散らかす」という言葉をつけて喋る癖があるのだ。
例えば、日常会話で「あんたそれ何食ってんの?」みたいな会話の切り口があるだろう。特にギャル同士で。
それをこのギャルは
「おいオメー何食い散らかしてんだよッ笑」
というふうに言う。
しかもその食い散らかしていると表現された相手は全然食い散らかしてはおらず、普通にパンとかを丁寧にいただいている。
そのギャルの表現技法の勢いたるや。
ただの会話にちょい足しアレンジをするそのシャレオツな若者に注目していた私はあることに気づく。
会話に参加している当の本人たちは所謂「ウケ」として使っている訳ではなく、ごく自然なコミュニケーションの中にその「語尾散らし」を落とし込んでいるのだ。
なので、勝手に聞いているこちら側をナチュラルにツボらせてきている。
普通、他人のおもしろ雑談なんかは自分のフィールド外で展開されているので、聞き流している分ウケ度はいくらか軽減される。
ましてやフィールドが喧騒を極むカフェテリアなどでは尚更だ。
しかしそのギャルは違った
声がでけぇのだ
デカすぎる、いや
轟音(でか)すぎる
しかし自然の摂理の上では至極当然のこと
キリンは首が長い、カラスは空を飛ぶ、チーターは足が早い、ギャルは咆哮(こえ)が轟音(でか)い
しかもそのキャンパスの生徒は大半が外国人である為、カフェテリアを占める人口の75%は英語での会話を繰り広げている。
そんな中トガりにトガった母国語の大咆哮がさんざめくとなればジャパニーズサムライであるおれが傾聴するのも無理はない。
気がつけば自分の耳も彼女らの会話を優先的にキャッチするものへと進化していった。
生物の進化の美しさである
キリンは首をのばし、チーターは脚力を上げ、おれはギャルの馬鹿騒ぎを識別する
ごめんダーウィン、こんな進化をする種など今すぐ滅ぼそう
人類特有の文明力の結晶である言葉。
隙あらば動詞の語尾を散らかすテクニカルジャパニーザーが今アツい。
そんな勢いのある会話は日々の楽しみとなる。
「えースタバの新作今日からか!早速帰りに寄り散らかそー」
「ちょっと歯ァ磨き散らかしてくるね」
「なんか最近寒くね?笑 フツーに凍え散らかすんだけど」
「昨日寝散らかしたのが3時とかだからさ〜」
「うわサイアク 割り箸落とし散らかした」
「今月金使い散らかしてて泣き散らかしてる」
「てかネイルみて〜」
「あ、オススメした映画見た!?😃 見散らかした!?😃」
「ほざけ散らかせ笑笑笑」
「なに野菜ジュースとか飲み散らかしてん笑」
「いやWWWWWWふざけWWWWWW散らかせWWWWWWW」
「漏れ散らかす〜〜」
「やべ、時間ない!はよ片付け散らかせ!」
「てかさっきからこっち見散らかしてるやつなに?」
「…なんかこっち見てにやけ散らかしてない?」
「やばっ 目合い散らかしちゃった……キモ散らかせよほんと」
「…なんか気味悪いわ、あっち行こーぜ」
「……」
「チッ」
ッハッ!
チュンチュン…
ハァ…ハァ…
ハァ……..
夢か……