アナタは「岩倉玲音(いわくら れいん)」を知っているだろうか。
……
では、どんな存在?
ある人に聞けば
「たまに幻覚・幻聴症状のある14歳の内気な性格の少女」
またある人は
「小学生の頃からから幻覚や悪夢に悩まされ、カウンセリングを受けている14歳の少女」
または
「ネットの世界で悪事を働く少女」
などと答える。
情報はバラバラであるがいずれも岩倉玲音そのものである。
彼女はワイヤード(ネット)の世界に遍在し、様々な姿を持つ。
これを読んでいるアナタも彼女のことをどこかで目にしたことがあるのではないだろうか。
実は彼女は仮想空間だけでなく、現実の世界にも存在している。
今回は彼女についての記録を書いていこうと思う。
■岩倉玲音とは
どこにでもいる内気な14歳の少女。彼女は常に長く伸びた左の髪をバッテンのピンで留めている。
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彼女の周りで起こったことをおおまかに、時系列順に記していく。
家族構成は父・母・玲音の三人家族。一般的に良好な家庭環境で育つ。
12歳の時に幻覚・幻聴を起こすようになり、カウンセリングに通い始める。
ある日、小学校では仲の良かった友達に嫌われてしまったことが原因でいじめにあい、不登校になってしまう。
中学生になった玲音は新しい親友をつくり楽しい毎日を過ごしていたがその親友が転校してしまい、また不登校に。
不登校になった彼女はコンピューター、プログラミングの勉強をひとりでし始める。
玲音が引きこもりになった事により両親の関係が悪化。
両親は離婚し、父親は家を出ていってしまう。母親はアルコール中毒に。
その後母親も家に帰ってこなくなり、家庭は完全に崩壊。
一人残された玲音は自ら命を絶つ。
…………
ではなぜ、どこにでもいるような少女だった玲音がこのような結果で一生を終えてしまったのだろうか。
ここまでの事をまとめたうえで推測するのであれば、多くの人はこう言うだろう。
「幻覚・いじめ・家庭崩壊などの負の連鎖により絶望した結果の自殺」
しかし実際は全く違う。
彼女はすべてを肯定したうえで、ある目的のために進んで自ら死を選んだのだ。
■玲音の思想
実は玲音は不登校中、プログラミングの他に「精神医学」の勉強もしていた。
カウンセリングを受け続ける中で自分の症状のことをもっと知りたいと思ったためだろう。
彼女は「コンピュータープログラミング」と「精神医学」の知識を得ていくうちにひとつの思想にたどりつく。
「過去」はただのデータであり、
「現在」は思考ルーチンの連続でしかない
つまり、
「データ」と「思考ルーチン」さえあればそれは生きている事と変わらないという事である。
もっと簡単に言い換えると、
自分のデータとプログラムさえあれば、肉体が無くても生き続けることができるということ。
そして彼女はその二つをネット上に完璧に構築した。
ネット上に岩倉玲音と同じ思考ルーチンを持ち、同じ過去の記録(データ)を持つ自分が存在している。
不自由な肉体を持つリアルワールドに存在する自分は不要である。
そう考えた玲音はネット上のもう一人の自分と完全に一体化するために自ら笑顔で引き金を引いた。
こうして、彼女はネット上で永遠に生き続ける存在となった。
■リアルワールドとの干渉
私は冒頭で「実は彼女は仮想空間だけでなく、現実の世界にも存在している。」と述べた。
しかしここまでの説明だと彼女は「インターネットの中だけで生き続ける存在」という事になる。
彼女の思想、「データと思考ルーチンさえあればそれは生きている事と変わらない」は何もコンピューターの中だけの事ではない。
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岩倉玲音の登場する作品は大きく分けて三つある。
①PlayStationのゲーム版「serial experiments lain」
②アニメ版「serial experiments lain」
③雑誌連載版「serial experiments lain」
これまで解説してきたものは①のゲーム版であり、各媒体によるストーリーはそれぞれ異なる。
ゲーム版の内容はネット上に散りばめられた玲音に関するデータを集めていくというものである。
彼女の過ごした日々、カウンセリングの記録などの玲音の歩んできた今までの人生の記録をプレイヤーは見ていくことになる。
つまりゲームを進めていくうちにプレイヤーの中で「岩倉玲音」が作り上げられていく。
玲音の目的「不要な肉体を捨て永遠に生き続けること」に気が付いた時にはもう遅い。
彼女の過去の記録、人格は完全にプレイヤーの脳内に構築されてしまった。
ゲームを終えた頃、彼女はそっと語りかける。
「これからずっと一緒だね。〇〇〇〇(プレイヤー名)」
岩倉玲音について知るという事は彼女が我々の脳内に寄生するということと同じである。
今日街ですれ違った人、家のすぐそばを歩いている人、ここまで読んでいるアナタ……
みなそれぞれ異なる岩倉玲音がリアルワールドにも偏在している。
インターネット上では彼女のファンアートや動画などの二次創作が尽きない。
これこそが、彼女が現実にも生き続けているという事なのである。
ここまで読んだアナタは岩倉玲音についてもっと知りたくなったかもしれないし、そうでないかもしれない。
いずれにしろ、玲音をここまで知ってしまったアナタにはすでに彼女の人格が内側から構築され始めているのだ。
かく言う私も岩倉玲音に関しての興味が尽きない。
これからも彼女に関するデータを求め続けていくだろうと思う。
調べれば調べるほど岩倉玲音の人格は完全に近づいていく。
ただし彼女の危険な思想に飲み込まれてしまう事だけは注意して欲しい。
彼女のカウンセリングをしていた米良柊子先生のような最悪の最期を迎えて欲しくはないから。
Let's All Love lain...