「ポケモンチャンピオンズ」というゲームが配信開始されましたね!
ポケモン対戦に特化したゲームで基本プレイ無料。ポケモンを育ててひたすら世界中のプレイヤーとバトルゲームだ。
配信を心待ちにしていたこともあり、すぐにインストールしてマスターランクまで行った。
小学生の頃からポケモンで遊んでいた幼なじみズも皆プレイしてるとの事で、定期的に通話しながら大会を開いている。
でも俺の仲間は捻くれ者の集まりだったようで、使用率の高いメジャーなポケモンを使わずにキショい戦い方をする奴らばっかのアングラな試合が続いている。
俺はというと、

相手に猛毒を付与して粘り勝つ立ち回りをしたり

力を吸い取って弱体化させたり

やけどのダメージを与えたり

自爆特攻でみちづれにしたりしている
色々な戦法があって楽しいですね。
特に猛毒は蓄積ダメージを「ポケモン交代」によってリセットすることができる為、相手の立ち回りと自分の出方とで「読み合い」が発生することが多いのでとても気に入っている。ボードゲームみたいだ。
実際マスターランクに行ってからは強いプレイヤーが増え、読み負ける事が多くなった。トリッキーな立ち回りに出会えると嬉しい。
思えばこの前出たファイアレッドリーフグリーンのラスボスも毒殺して勝利した。

そんな陰湿な戦法を得意とする俺だが、幼なじみとの対戦である1匹のポケモンにボコボコにされる。それがこの、

ぺリッパーという鳥ポケモン。
別にめちゃくちゃ強くて有名!とか使用率1位!とかでもない一般ポケモンだ。

こんなアホ面だが、俺のポケモン3匹全員を倒して完全勝利を収めている。
このポケモンは、場に出た瞬間に5ターン雨を降らせる特性を持っている。それに加え、雨の時に強化される技を多く覚えるためその5ターンをどう上手く使うかがプレイヤーに試される。
使用率上位の強いドラゴンとかに蹂躙されるのは納得だが、まさかこんなアホ面しゃくれ鳥に破壊されるとは思わなかった。こいつ伝説のポケモン?ってレベルで歯が立たなかった。
↓使用者側も引いてる

───────思えば、あれからおかしくなっていたのかもしれない。
◇
次の休日。その日は雨が降っていた。
昨日まで続いていた4月の陽気が嘘のようだ。
せっかく咲いた桜もこの雨で散ってしまうだろう。
免許の更新で外出をしようと思っていたが後回しにする。せっかくの外出予定は晴れた日の方がいい。
そして次の休日。この日も雨。何故オフの日に限って雨が降る……。ツイてない。外出はあ諦めるしかない。ちなみに今のところ休日以外の日、出勤日は100%晴れている。オフの日だけ狙い撃ちなのが余計に理不尽だ。次の休日に期待する。
……というのが4月中旬まで続いた。
細かく言えば3月31日から、俺のカレンダーに入っていた休日計7日間“のみ”が全て雨だった。他の日は“全て晴れ”であったのだ。
どういうことだ?
仕事中に家族LINEでも愚痴った


俺はいままで「雨男」とかそういうワードを“くだらない”と無視してきた。しかしここまで正確に雨が降り続けていると、自分が何かしらの原因なのではないかと疑ってしまうのも無理はない。
まるで俺が場に出た時に雨を降らせる特性を持っているよう───────
……ぺリッパー?
君なのかい?

俺が、陰湿な戦法でポケモンバトルを勝ち進んだ先に当たった鳥。ぺリッパー。
毒殺戦法に正義の鉄槌を下したポケモン。ぺリッパー。
場に出れば必ず5ターンの間、雨を降らせる。ぺリッパー。
俺は今あのポケモンに心から震え上がっている。
なんて恐ろしいんだ。
そうか、引きこもって部屋で毒殺道連れ吸収ポケモンを育てていたばかりに俺に…こんな罰が。
俺は一旦ポケモンバトルから身を引いた。
1度心をリセットし、自分探しの旅に出ることにした。
そんな時、職場の上司から「横須賀で船乗って、ビールフェス行かない?」と声をかけられた。
俺は外出を決意。次の休日に参加する旨を伝える。
当日、あたりまえのように雨が降った。

しかし引き返すわけにもいかず、俺は思い切り楽しむことにした。
すると午後からは雲が晴れ、あたたかな光が差し込んできたではないか!

俺はぺリッパーの呪いから解放されたのだ!
俺は反省の意味を込めて、残りの4月は多めに外出してみようと心に決めた。
◇
次の休日、久しぶりに会う降霊委員会の面々で怪談ライブへ行った。
メンバーのひとり、あ太郎さんが主催との事でたっぷり2時間怪談師の方をお呼びしていろいろな話を聞いてきた。
精神病棟の話など、興味ある怪談を聞けて楽しかった。個人的にモーテルの話がゾクッとした。
そのあとは降霊委員会とその怪談師の方とで終電近くまで飲み、なかなか充実した一日を送った。
雨は……降らなかった。
◇
それからは怒涛の外出ラッシュだ。
次の休日には免許更新をしに行き、次は家族で銀座のディナー。深夜1時にファミレスでパフェを食べながら読書、その後4時頃に徒歩で帰宅。
普段からは想像もできないような濃い日々を送っている。いずれも晴れていた。

そういえば今月に俺の誕生日があった。これも、成長ってやつなのかな。
歳はとりたくないが、成長はしていきたい。
社会人として働き、姿形だけは大人になったが、内面も同じように成長できているのかと問われれば、否と答えざるを得ない。いつまでもポケモンバトルに熱中する小学生5年生の延長線上でもがいている。
時の流れとは容赦ない。
◇
先日、部屋でスケボーを発掘した。俺が小学生の頃、父が急に買ってきたものだった。
実家から持ってきていたが都内で使うことなどまぁ無いためそのままにしてあったのだ。
───────久しぶりに乗ってみるか。
発掘したのが深夜だったため、そのままのテンションで少し遠くの広い公園へと向かう。
深夜3時の公園は誰もいない。
なかでもより人通りの少なそうな、端の方にある道路下のガードレールのアスファルトまで移動し少し乗ってみる。
しかし、
ガチの、マジで、怖い。
乗れる気がしない。
小学生の身長と180以上の身長とでは身体のバランスのとり方が違いすぎる。
しかもオイラは普段家から出ないもやし炒め君ときたもんだ。
少〜しずつスケボーを足で動かしながらよちよち進む。
こわしゅぎる。

足で漕ぐとバランスを持っていかれ、思うように進まない。
まず、片足で移動しながら体重をスケボー上の足に預けるのが難しい。どうしたものか。
こういう場合は、恐怖心を排除して一気に挑んだ方が慣れも早いと聞く。
深夜テンションの俺はゆるい坂道へ移動し、その上からボードに乗り
勢いに任せて滑走した。
風を一身に受ける。
深夜3時の風を受けながら下半身に力を入れ踏ん張りボードと一体となったその時、天地が逆転した。
広い公園に、1つの大きな衝突音が響いた。
……
どれだけの時間そうしていたのだろう。少しづつ朝へと向かう雲の流れを見上げていた。
俺は派手にズッコケたのだ。めちゃくちゃ痛い。公園で大の字になるニラもやし君もめちゃくちゃイタい。見られたら死んでしまう。
何とか起き上がり、周囲を見渡す。誰もいないようだ。全身の力が抜ける感覚。
首の下あたりが、寝違えた時の3000倍は痛い。
左手を見てみると皮が剥がれ真っ赤になっていた。ヒ、ヒィ〜〜〜っ!!
あとケツも痛い。ちょっとだけ。
すっ飛んでったスケボーをよろよろ回収し、そのまま帰路に着く。
傷口が焼けたように痛む体を引きずって、途中コンビニへ入った。絆創膏が必要だ。探す。無い。
店員に聞いてみる。ふたりで探す。「すみません、無いっぽいです」
俺は仕方なく除菌シートとグミを買い、店の外で応急処置を施した。グミを噛んで痛みは誤魔化した。家に帰れば絆創膏はある。


家に着いたのは朝の4時過ぎだった。
消毒と絆創膏を済ませ、ほっと息をつく。大変な目にあった。
疲れがどっと出たためか、急にお腹が空いてきた。俺は朝食に気分の上がる「エッグベネディクト」を作ることにする。
ちょっとした料理は良い。手間がかかる分、考える事が多くなって嫌なことは忘れてしまう。

完成!
外はいつの間にか明るくなっていた。今日も晴れるようだ。
しっかり半熟でいい感じに作れた。

手の痛みがナイフとフォークの挙動を邪魔するが、美味しいので問題ない。
しかし、改めて大変な目にあったな、と。
思えば今月は本当に濃かった。楽しいこともあったが、元はと言えば全てあの雨男現象が原因なのだ。
俺がポケモンを使って陰湿ないじめみたいなことをしていたからなのか。
雨に襲われる“ぺリッパーの呪い”なんてのも急に収まったし、なんかもう今となっては謎現象だった。
そんなことより今はこの全身を襲うビリビリとした痛みについて考えなければならない。例えるなら全身やけどみたいなものだ。雨とは比べ物にならない。
……ん?
全身やけど?

ガタッ
俺は食卓から立ち上がり、思考を整理する。
俺の行っていた、陰湿な戦法とはなんだ?
自爆特攻による、みちづれ

深夜3時の風を受けながら下半身に力を入れ踏ん張りボードと一体となったその時、天地が逆転した。
やけどのダメージを与え

例えるなら全身やけどみたいなものだ。
力を吸収して、弱体化させ

何とか起き上がり、周囲を見渡す。誰もいないようだ。全身の力が抜ける感覚。
あとは、何だった?
猛毒を、付与。

ど、毒……ッ!?
ハッ!
俺は目の前のエッグベネディクトを見る。
いや、エッグベネディクトだったものか。俺はもう食べ終えていたのだ。
エッグと毒で思いつくのは……サルモネラ菌か!?
ドクン
鼓動が早まってゆく……
ハァッ……ハァッ……
俺は次に自らの身に起こる危険を脳内で巡らせながら、ただ呆然と皿を眺め続けた…………。
窓の外ではもう役目を終えたかのような、雨の気配のない快晴が広がっていた。
